資格試験カレンダーアプリ開発秘話|試験日程を一括管理するツールの作り方

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「あれ、今年の社労士試験っていつだっけ?」「簿記検定の申込期限いつまでだっけ?」資格取得を目指す人なら、誰もが一度は経験する試験日程の確認作業。私自身、社労士として働きながら複数の資格取得を目指していた時期、この情報を探すのに毎回時間がかかっていました。この記事では、その課題を解決するために開発した「資格試験カレンダー」アプリの開発秘話と、実装で学んだ技術的なポイントを紹介します。

なぜ資格試験カレンダーアプリを作ったのか

資格試験日程管理の3つの課題

資格試験の日程管理には、以下のような課題がありました:

  • 情報が散在している:各試験の公式サイトを個別に確認する必要がある
  • 申込期限の見落とし:試験日は覚えていても、申込期限を忘れがち
  • 複数資格の管理が大変:関連資格を複数受験する場合、スケジュール調整が難しい

私自身、社労士試験を受験した際、周辺の関連資格(衛生管理者、年金アドバイザーなど)も同時に勉強していたため、試験日程の把握に苦労しました。「主要な資格試験の日程を一覧できるカレンダーがあれば便利だな」と思ったのが、このアプリ開発のきっかけです。

既存サービスの調査と課題

開発前に、既存の試験日程サービスを調査しましたが、以下のような問題がありました:

  • 特定分野(IT系、会計系など)に特化していて、全分野を網羅していない
  • 情報更新が遅く、最新の日程が反映されていない
  • 広告が多く、使いづらい
  • スマホ対応が不十分

「ないなら作ろう」と決心し、開発をスタートしました。

アプリの設計思想と技術選定

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ユーザー体験を最優先にした設計

このアプリで最も重視したのは「すぐに目的の情報にアクセスできること」です。以下の設計方針を立てました:

  • シンプルなUI:カレンダー形式で視覚的に日程を把握できる
  • 高速表示:ページを開いたら即座に情報が表示される
  • カテゴリー絞り込み:IT系、法律系、会計系などでフィルタリング可能
  • 完全無料:誰でもアカウント登録不要で使える
  • レスポンシブ対応:スマホでもPCでも快適に使える

技術スタックの選定理由

静的サイトで実装することを決めた理由は以下の通りです:

採用技術:
- フロントエンド: HTML/CSS/JavaScript(Vanilla JS)
- カレンダーライブラリ: FullCalendar.js
- ホスティング: GitHub Pages
- データ管理: JSON形式(静的ファイル)

なぜこの構成にしたか:

  • サーバーコスト0円:GitHub Pagesなら完全無料で公開できる
  • 高速表示:静的ファイルなので読み込みが非常に速い
  • メンテナンス性:JSONファイルを更新するだけで情報を更新できる
  • 学習コスト低:フレームワーク不要なので、初心者でも理解しやすい

実装で工夫したポイント

1. JSONデータの構造設計

試験情報を以下のような構造で管理しています:

{
  "exams": [
    {
      "id": "sharoushi_2025",
      "name": "社会保険労務士試験",
      "category": "legal",
      "examDate": "2025-08-24",
      "applicationStart": "2025-04-14",
      "applicationEnd": "2025-05-31",
      "resultDate": "2025-11-08",
      "url": "https://www.sharosi-siken.or.jp/",
      "description": "労働・社会保険の専門家資格"
    }
  ]
}

この設計のメリット:

  • 試験日だけでなく、申込期間や結果発表日も管理できる
  • カテゴリー別にフィルタリングしやすい
  • 公式サイトへのリンクを含めることで、詳細情報へ誘導できる
  • 後から項目を追加しやすい拡張性

2. カレンダー表示の実装

FullCalendar.jsを使ってカレンダー表示を実装しました。このライブラリを選んだ理由は:

  • ドキュメントが充実している
  • レスポンシブ対応が標準で含まれている
  • イベントのクリック処理がカスタマイズしやすい
  • 月表示・リスト表示の切り替えが簡単

実装で苦労したのは、「試験日」「申込開始」「申込締切」「結果発表」の4つの日付を、色分けして表示する部分でした。最終的には、イベントの種類ごとに異なるclassNameを付与し、CSSで色分けする方法で実装しました。

3. カテゴリー絞り込み機能

資格試験は分野が幅広いため、カテゴリー絞り込み機能は必須でした。以下のカテゴリーを用意しています:

  • 法律系(社労士、行政書士、司法書士など)
  • IT系(基本情報技術者、応用情報技術者など)
  • 会計系(簿記、税理士、公認会計士など)
  • 医療・福祉系(看護師、介護福祉士など)
  • 語学系(TOEIC、英検など)
  • その他(宅建、FPなど)

絞り込みはチェックボックスで実装し、複数選択可能にしました。JavaScriptで選択されたカテゴリーのイベントだけをフィルタリングして表示する仕組みです。

4. レスポンシブ対応の工夫

スマホで見る人が多いことを想定し、以下の対応をしました:

  • タッチ操作対応:イベントのタップで詳細ポップアップを表示
  • 月/リスト表示切り替え:スマホでは「次の試験一覧」リスト表示をデフォルトに
  • 読み込み高速化:必要なデータだけをロードする遅延読み込み
  • フォントサイズ調整:スマホでも読みやすい文字サイズ

開発で直面した課題と解決策

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課題1: データの鮮度をどう保つか

最大の課題は「試験日程の情報をどうやって最新に保つか」でした。各試験の公式サイトを毎回チェックするのは非現実的です。

解決策:

  • 年に1〜2回、主要資格の日程を一括更新する定期メンテナンス
  • ユーザーからの情報提供フォームを設置(コミュニティ協力)
  • 各試験の「例年の実施時期」をメモとして記録し、次年度の予測に活用

完璧な自動化は難しいため、「更新日」を明記して、ユーザーに情報の鮮度を伝えるようにしました。

課題2: 試験の追加・削除をどう管理するか

試験によっては、年によって実施されなかったり、新設されたりします。この変動にどう対応するかが課題でした。

解決策:

  • JSONファイルに「active」フラグを追加し、非実施の試験は非表示に
  • 過去データも残しておくことで、翌年の参考にする
  • 新規試験の追加は、JSONに1エントリー追加するだけで対応可能な仕組み

課題3: パフォーマンス最適化

当初、全試験データ(約150件)を一度に読み込んでいたため、初回表示が遅くなる問題がありました。

解決策:

  • 「今後3ヶ月以内の試験」を優先的に読み込む
  • 過去の試験データは「アーカイブ」として別ファイルに分離
  • 画像を使わず、アイコンはUnicode絵文字で軽量化

この改善で、初回表示時間を約2秒から0.5秒以下に短縮できました。

リリース後のユーザー反応と改善

ユーザーからの反響

リリース後、予想以上に多くの方に使っていただけました。特に以下のような声をいただきました:

  • 「複数の資格を同時に勉強している人にとって、スケジュール調整がしやすい」
  • 「申込期限のリマインダーとして活用している」
  • 「シンプルで使いやすい。広告がないのが良い」

実施した機能追加

ユーザーフィードバックを受けて、以下の機能を追加しました:

  • 検索機能:試験名で検索できるように
  • Googleカレンダー連携:気になる試験をGoogleカレンダーに追加できる機能
  • 年度切り替え:来年度の試験日程も確認できるように
  • お気に入り機能:自分が受験予定の試験だけを表示

このプロジェクトで学んだこと

技術面での学び

  • ライブラリ選定の重要性:FullCalendar.jsを使ったことで、開発時間を大幅に短縮できた
  • データ設計の大切さ:最初にJSON構造をしっかり設計したことで、後の機能追加がスムーズだった
  • パフォーマンス意識:ユーザー体験向上のため、表示速度最適化は必須
  • レスポンシブの実装パターン:スマホファーストで設計する重要性を実感

プロダクト開発の学び

  • 自分の課題を解決するツールは、同じ悩みを持つ人の役に立つ
  • 完璧を目指さず、まずリリースして反応を見る重要性
  • シンプルさは最大の価値:多機能より、1つのことを確実にやる
  • 継続的な改善:ユーザーの声を聞いて、少しずつ良くしていく

今後の展望

今後、以下の機能追加を検討しています:

  • 通知機能:申込期限が近づいたらメール通知
  • 合格率データの表示:過去の合格率も参考情報として表示
  • 学習リソースへのリンク:おすすめの教材や無料学習サイトの紹介
  • 海外資格の対応:CPA、CFAなど国際資格も追加

まとめ

資格試験カレンダーアプリの開発を通じて、「自分の課題を解決するツールを作る」ことの価値を実感しました。このプロジェクトのポイントをまとめます:

  • 課題の明確化:自分が実際に困っていた「試験日程の一括管理」という具体的な課題から出発
  • 技術選定:静的サイト + FullCalendar.jsで、無料かつ高速なアプリを実現
  • データ設計:JSON形式で柔軟性と拡張性を確保
  • UX重視:シンプルで迷わない設計、レスポンシブ対応
  • 継続的改善:ユーザーフィードバックを受けて機能追加

資格試験を受験する方々の学習スケジュール管理に少しでも貢献できていれば嬉しいです。もし、このアプリに追加してほしい機能や、掲載してほしい試験があれば、ぜひお問い合わせください。

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