エンジニアのための簿記入門|ITと会計の融合で市場価値を10倍にする方法

エンジニアのための簿記入門|ITと会計の融合で市場価値を10倍にする方法

はじめに:なぜエンジニアが簿記を学ぶのか?

「エンジニアに簿記なんて必要ない」

そう思っていた時期が私にもありました。しかし、簿記2級を取得してから、仕事の幅が劇的に広がりました

  • 経理システム開発の要件定義ができる
  • 財務データ分析の依頼が増える
  • 経営層とのコミュニケーションが円滑になる
  • フリーランスの確定申告が楽になる

この記事では、エンジニアが簿記を学ぶメリットと、効率的な学習法を詳しく解説します。

エンジニア × 簿記 = 希少価値

なぜ掛け算なのか?

単独のスキルでは、市場に溢れています:

  • エンジニアだけ: 100万人
  • 簿記2級だけ: 200万人

しかし、両方持っている人は極めて少ない:

  • エンジニア × 簿記2級: 推定1万人程度

つまり、100分の1の希少人材になれます。

実際の市場価値

私が簿記取得後に受けた案件:

案件内容 単価(月額) 要求スキル
経理システム開発 80万円 IT + 簿記
財務データ分析 90万円 IT + 会計知識
会計SaaS開発 100万円 IT + 簿記 + UI/UX

通常のWeb開発案件(50〜60万円)と比べて、1.5〜2倍の単価です。

簿記とは何か?

簿記の定義

簿記とは、企業のお金の流れを記録・計算・整理する技術です。

具体例:

  • 商品を100万円で仕入れた → 記録
  • 売上が150万円あった → 記録
  • 利益は50万円 → 計算
  • 財務諸表を作成 → 整理

簿記3級と2級の違い

項目 簿記3級 簿記2級
対象 個人商店レベル 中小企業レベル
難易度 基礎 実務レベル
学習時間 100時間 250〜300時間
合格率 40〜50% 20〜30%
実務価値 低い 高い

エンジニアは2級を目指すべき。3級では実務で使えません。

エンジニアが簿記を学ぶメリット

メリット1: 経理システム開発ができる

Before(簿記なし):

エンジニア: 「仕訳って何ですか?」
経理担当: 「説明が大変...」
→ 要件定義が進まない

After(簿記あり):

エンジニア: 「借方・貸方の処理ですね。わかりました」
経理担当: 「話が早い!」
→ スムーズに開発開始

メリット2: データ分析の精度が上がる

財務データの本質が理解できる:

# Before: 意味がわからず機械的に分析
df.groupby('account_name').sum()

# After: 勘定科目の意味を理解した分析
# 「売上原価」と「販売費」を分けて分析する理由がわかる
cost_of_sales = df[df['account_type'] == '売上原価']
selling_expense = df[df['account_type'] == '販売費']

# 粗利率の計算
gross_margin = (sales - cost_of_sales) / sales

メリット3: 起業・副業が楽になる

確定申告が自分でできる:

  • 税理士費用: 年間10〜30万円 → 0円
  • 会計ソフト: 年間1〜2万円のみ
  • 10年で100〜300万円の節約

資金繰りが理解できる:

  • 利益が出ているのに現金がない理由
  • 赤字でも倒産しない理由
  • キャッシュフロー経営の重要性

メリット4: 経営層と対等に話せる

Before:

経営者: 「ROEを改善したい」
エンジニア: 「???」

After:

経営者: 「ROEを改善したい」
エンジニア: 「自己資本利益率ですね。純利益を上げるか、自己資本を減らすか、どちらでしょうか?」
経営者: 「お、わかってるね!」

簿記2級の学習ロードマップ

ステップ1: 基礎固め(1〜2ヶ月)

やること:

  1. 簿記3級の基礎を学ぶ

    • 仕訳の基本
    • 勘定科目の理解
    • 試算表の作成
  2. 使用教材:

    • テキスト: 「スッキリわかる日商簿記3級」
    • 問題集: 「スッキリとける日商簿記3級」
    • YouTube: 「ふくしままさゆき」の無料講義

学習時間: 1日2時間 × 30日 = 60時間

ステップ2: 2級の商業簿記(2〜3ヶ月)

やること:

  1. 商業簿記の理論を学ぶ

    • 有価証券
    • 固定資産
    • リース取引
    • 退職給付会計
    • 税効果会計
  2. 使用教材:

    • テキスト: 「スッキリわかる日商簿記2級 商業簿記」
    • 問題集: 「スッキリとける日商簿記2級 商業簿記」

学習時間: 1日2時間 × 60日 = 120時間

ステップ3: 2級の工業簿記(1〜2ヶ月)

やること:

  1. 工業簿記の理論を学ぶ

    • 原価計算
    • 標準原価計算
    • CVP分析
    • 直接原価計算
  2. 使用教材:

    • テキスト: 「スッキリわかる日商簿記2級 工業簿記」
    • 問題集: 「スッキリとける日商簿記2級 工業簿記」

学習時間: 1日2時間 × 40日 = 80時間

ステップ4: 過去問演習(1ヶ月)

やること:

  1. 過去問10回分を解く

    • 時間を計って本番形式で
    • 間違えた問題は徹底復習
  2. 使用教材:

    • 「合格するための過去問題集 日商簿記2級」

学習時間: 1日3時間 × 30日 = 90時間

合計学習時間: 350時間(約6ヶ月)

エンジニア向け学習のコツ

コツ1: プログラミング的に理解する

仕訳をコードで考える:

class Entry:
    def __init__(self, debit_account, credit_account, amount):
        self.debit = {debit_account: amount}   # 借方
        self.credit = {credit_account: amount}  # 貸方

    def validate(self):
        # 借方と貸方は必ず一致
        assert sum(self.debit.values()) == sum(self.credit.values())

# 例: 現金で商品を仕入れた
entry = Entry(
    debit_account='仕入',    # 資産の増加
    credit_account='現金',   # 資産の減少
    amount=100000
)

コツ2: Excelで実践する

勘定科目をデータベースのように管理:

| 日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|------|---------|---------|---------|---------|
| 1/1  | 現金    | 100,000 | 資本金  | 100,000 |
| 1/5  | 仕入    | 50,000  | 現金    | 50,000  |
| 1/10 | 現金    | 80,000  | 売上    | 80,000  |

ピボットテーブルで試算表を作成:

  • 行: 勘定科目
  • 値: 借方合計 - 貸方合計

コツ3: アプリを作る

簿記学習アプリを自作:

  1. 仕訳練習アプリ

    const problems = [
      {
        question: '現金100,000円で商品を仕入れた',
        answer: {debit: '仕入', credit: '現金', amount: 100000}
      },
      ...
    ];
    
  2. 試算表自動作成アプリ

    • 仕訳を入力
    • 自動で試算表を生成
    • 貸借が一致しているかチェック

作ることで理解が深まる

私の簿記2級合格体験談

学習開始〜2ヶ月

  • 簿記3級のテキストを読む(理解度50%)
  • 簿記的な考え方に慣れない
  • 「借方・貸方の概念」で挫折しかける

3〜4ヶ月

  • 商業簿記に取り組む
  • Excelで実践しながら学習
  • 徐々に理解が深まる

5〜6ヶ月

  • 工業簿記に取り組む
  • 原価計算が意外と楽しい
  • 過去問演習開始

試験当日

  • 商業簿記: 52点/60点
  • 工業簿記: 38点/40点
  • 合計90点で合格(合格ライン: 70点)

合格後の変化

  • 経理システム開発の案件が増加
  • 単価が1.5倍にアップ
  • フリーランスの確定申告が楽になる

ITスキル × 簿記でできること

1. 会計SaaS開発

freee、マネーフォワードなどの競合:

  • 個人開発でもニッチな分野なら勝てる
  • 例: 特定業界向け会計ソフト
  • 例: 簿記学習アプリ

2. 財務データ分析

経営分析ダッシュボード:

import pandas as pd
import plotly.express as px

# 財務データを読み込み
df = pd.read_csv('financial_data.csv')

# 損益計算書の可視化
fig = px.bar(df, x='年度', y=['売上高', '営業利益', '純利益'])
fig.show()

# ROE・ROAの推移
df['ROE'] = df['純利益'] / df['自己資本']
df['ROA'] = df['純利益'] / df['総資産']

3. 自動仕訳システム

機械学習で仕訳を自動化:

from sklearn.ensemble import RandomForestClassifier

# 過去の仕訳データで学習
X = df[['金額', '取引先コード', '日付']]
y = df['勘定科目']

model = RandomForestClassifier()
model.fit(X, y)

# 新しい取引の勘定科目を予測
predicted = model.predict([[50000, 123, '2025-01-01']])

まとめ: エンジニア × 簿記で市場価値10倍

簿記2級を取得することで、以下のメリットがあります:

  1. 案件単価1.5〜2倍

    • 経理システム開発
    • 財務データ分析
    • 会計SaaS開発
  2. 起業・副業が有利

    • 確定申告が自分でできる
    • 経営数字が理解できる
    • 資金繰りが見える
  3. キャリアの幅が広がる

    • 経営層との対話
    • CFO候補
    • コンサルタント

学習時間: 350時間(6ヶ月)

これだけの投資で、市場価値が10倍になります。

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✍️ この記事を書いた人

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MechaTora

社会保険労務士 × Web開発エンジニア × データサイエンティスト。
人事労務の専門知識とプログラミングスキルを活かして、実務に役立つツールやコンテンツを開発・発信しています。